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​猫の横隔膜ヘルニア             

状態や原因によって次の3種類にわけられます。

 🐈外傷性横隔膜ヘルニア
   事故などによる外傷で後天的に横隔膜が裂けて

         しまったもの

 🐈腹膜-心膜-横隔膜ヘルニア
   先天的に心臓を包む膜(心膜)が腹腔とつなが

         ってしまったもの

 🐈食道裂孔ヘルニア
   横隔膜の中で食道が通る孔(食道裂孔)に異常があり、

   そこから腹部の食道や胃の一部が胸腔内に入り込んでしまうもの

​ 症状 

横隔膜ヘルニアの症状は、その原因やヘルニアの大きさ、入り込んでいる臓器の種類や程度によって様々です。無症状のこともあれば、呼吸が浅く苦しそうだったり、元気がなくじっとうずくまっていることが多いといった循環呼吸器系の症状を示す場合や、食欲不振・嘔吐・下痢・腹痛といった消化器系の症状を示す場合もあります。また、肝臓が胸部に入りこんだ場合は、肝障害を起こしたり、神経症状が見られたりすることもあります。

以下の症状が認められた際は​、お早めに動物病院へおつれください!

・お外から帰って来てから、呼吸がおかしい、うずくまっている。

・高いところから落下してから、呼吸がおかしい。

​・同腹の兄弟に比べ成長しない、ご飯を食べる量が少ない。

​ 好発猫種 

​腹膜心膜横隔膜ヘルニアにおいては、ヒマラヤンやその他長毛種に多くみとめられています。その他の原因においては、種特異性の報告はありません。

​ 検査(全て当院にて行えます) 

・レントゲン​検査 (超音波検査)

​胸の中にお腹の中の臓器が入ってきているのが確認されます。

​ 治療 

​基本的に、外科手術以外で完治を望むことは難しいですが、下記の理由により手術適応にならない場合もあります。​悩まれている場合は、一度ご相談にご来院ください。

・外傷性横隔膜ヘルニアの場合

交通事故や落下などの外傷直後でショック状態を示している場合や、重篤な症状を起こしている場合には、猫の状態を安定させることが最優先となります。ある程度状態が安定した後に胸腔内に入り込んだ臓器を元の位置にもどし、裂けた横隔膜を修復する外科手術を行います。ただし、時間がかなり経過し、横隔膜ヘルニアの目立った症状があまり見られないものでは、経過観察となることもあります。

腹膜-心膜-横隔膜ヘルニアの場合​

ヘルニア部分が小さく症状がない場合や、高齢で偶然見つかった場合などは、手術せずに経過観察や内科的治療を行うことがあります。しかし、年齢が若く、ヘルニア部分が大きかったり、症状が重かったりする猫では外科手術が適応となります。

食道裂孔ヘルニアの場合​

吐出や嘔吐、嚥下時の痛みといった食道炎や巨大食道症の症状を示すものであれば、まず、これらの症状に対する内科的治療を行います。内科的治療に反応しない場合には外科手術が推奨されています。

Case.1 720g(2ヶ月齢)雑種子猫の外科手術治療例

元気に暮らしていた子猫が、ある日を境に元気・食欲の低下、少し動くとハァハァと開口呼吸してしまうとの主訴でご来院なされました。レントゲン検査にて横隔膜ヘルニアと診断。

若齢で麻酔リスクもありましたが、飼い主様とご相談の上、整復手術を行いました。

​手術後よりみるみるうちに元気になり、後遺症もなくどんどん成長して元気に走り回っています。

​来院時(術前)レントゲン

​胸の中にお腹の中の臓器が入り込んでいるのがわかります。

​術後レントゲン

​術前のレントゲン写真で胸の中に入り込んでいた臓器が全てお腹の中に戻って、肺がしっかり膨らんでいるのが確認されます。

​手術所見(開腹時)

​お腹を開けてみると、胸の中に脾臓・胃・小腸・肝臓と大腸の一部が入り込んでおり、肺との軽度癒着が認められました。

​手術所見(ヘルニア孔閉鎖時)

​癒着を全て慎重に剥がし、裂開している横隔膜を縫合することで孔を塞ぎました。

Case.2 7歳齢雑種猫の外科手術治療例

保護猫さんをお家に迎え入れたところ、同居猫さん達に比べ呼吸が荒いとのことでご来院なされました。レントゲン検査と超音波検査にて横隔膜ヘルニアと診断。

年齢と明らかな外傷がないことから、先天性の慢性経過であると考えられますが、肺の圧迫が重度であり、呼吸が苦しそうであったため、飼い主様とご相談の上、整復手術を行いました。

​慢性経過であったため、術後のレントゲンでも一部の肺が膨らみきれてないですが、術前の臨床症状はなくなり、元気に同居猫さん達と遊んで暮らすことが出来ています。

​レントゲンや手術写真に関しましては、後日アップ予定です。今しばらくお待ちください。

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